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を考える会
について
川口学園
事件とは
発端は
お菓子解雇
事件
何が問題か 憲法裁判
としての
川口学園事件
賛同
署名者
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賛同署名

『川口学園事件』とは

1.特徴
 この事件の特徴は、労働運動の基本スタイルの一つである街頭演説とチラシ配りが、迷惑行為として裁判所により禁止されたということです。

2.事件の背景
 事の発端は、2010年9月、元埼玉女子短期大学(学校法人川口学園)准教授であった衣川清子氏の不当な解雇事件について、最高裁判所が棄却の判決を下したことに始まります。
 私たちがこれを「お菓子解雇事件」と呼んでいます(学生にお菓子を与えたことが重大な解雇理由の一つとして認定)が、使用者である学校法人川口学園は、最高裁判決後も私たちが組合行動をあきらめないと知り、いったんは自ら事務的な解決(金銭解決についての問い合わせ)を申し入れましたが、組合が解決案を具体的に提示すると拒否し、あいまいで不誠実な態度をとってきました。

3.仮処分決定
 2011年1月、組合と衣川氏が学校法人川口学園前で5回目の宣伝行動を行った直後、学園は裁判所に対して「組合による団体交渉申入れ禁止」「組合や関係者による学園・短大周辺での宣伝活動禁止」を求める仮処分申立を行いました。しかも、その主張を裁判所はそのまま認めたのです。同年3月、仮処分の決定が裁判所から出され、学校法人川口学園や埼玉女子短期大学近辺での街宣行動は4月8日まで、学校法人川口学園に対して組合や本人が架電すること(電話をかけること)は無期限に禁止されました。決定は、特に理由を明示する義務はないため、禁止の理由は不明でした。組合側がこれを不服として保全異議申立を行うと、やはり同じ決定が下されました。ここで挙げられていた理由は、衣川氏の裁判が昨年9月に最高裁で棄却され、従業員の地位がなくなったことから、組合が行った団交申し入れや宣伝活動が組合活動としての法的保護を受けないというものでした。しかし、宣伝行動を自粛すると通告したにもかかわらず長期間の禁止をかけたこと、また禁止の範囲も学校法人川口学園の周囲200メートルに及び(JR高田馬場駅構内が丸ごと含まれる)、宣伝の種類も問われないなど、禁止範囲が過大であること(たとえば高田馬場駅頭で「派遣法抜本改正を」「奨学金問題の解決を」「学費負担軽減を」と宣伝することも禁止されます)など、れっきとした労働問題であるにもかかわらず、労働法の視点がまったく含まれない、不当な決定です。

4.起訴命令
 この決定の理由は、衣川清子氏が最高裁判決によって学校法人川口学園との雇用関係を失ったということにあるようですが、それにより団体交渉権を失うという根拠はどこにあるのでしょうか。労働組合法の第3条によれば「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう」とあります。この場合の労働者は、労働基準法にいうところの労働者とは異なり、使用者・雇用者の関係を現在持つ者にとどまらず、失業者も含まれると解されています。衣川清子氏は失業者に相当しますから、同法第6条にあるように、「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する」わけです。裁判所の判断は全くの勘違いとしかいいようがありません。
 そもそも仮処分決定というのは、理由を示さずに出すことができます。しかし私たちとしてはこの理由をぜひとも詳細に説明してほしいと、弁護士と相談し起訴命令をかけてもらうことにしました。仮処分とはもともと本裁判を行う前提として行う申立てですから、私たちは「では裁判を起こしなさい」と、裁判所を通して通告しました。これが起訴命令です。裁判所の起訴命令から一定期間内に相手が裁判を起こさなければ、仮処分決定は無効になります。裁判では必ず仮処分決定の判断理由が出てきますので、それを私たちは知りたいということです。これを今地裁で争っています。
 現在私たちはこれを「川口学園事件」と呼んでいます。

5.争点と署名運動
 5回の宣伝行動は、適法かつ穏便に行われていたものです。うち3回は全労連や東京地評(東京地方労働組合評議会)が主催する争議支援総行動のひとつとして、厳格なスケジュールにしたがって25分間行われたもの、1回は埼玉女子短期大学の最寄り駅であるJR川越線武蔵高萩駅の駅頭でのビラ配りでした。これを業務妨害と主張する学園側の言い分が認められるなら、憲法が保障する表現の自由と労働三権は何のためにあるのでしょうか。
 そもそも営業妨害とは、営業の自由という人権を後ろ盾にしている権利ですが、私たちの行動の法的(=人権の)根拠は表現の自由です。憲法学者なら誰でも、「二重の基準論」という判例理論によって、経済的自由権である営業の自由よりも、精神的自由権である表現の自由の方が憲法上の保障を強く受ける人権であることを知っています。もし営業の自由が表現の自由に優先するなら、この社会は、金儲けのために雇用者は使用者の奴隷となるべきだといっているのと同じです。本訴において、人権保障を踏みにじる裁判所の判断が下されるような事態はなんとしても避けなければなりません。
 首都圏大学非常勤講師組合では、この問題を広く訴えるために、労働法・憲法・教育法学者を中心に署名運動を始めました。
 署名活動公表のための記者会見には朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、京都新聞社東京支局、連合通信、共同通信の各社が参加、連合通信が9月10日付の隔日版で記者会見の様子を伝えました。なお、大阪でも建交労大阪府本部の15分間の宣伝カー宣伝に対して会社が仮処分を申し立て、決定が出たという事件(北港観光バス事件)が起こっており、現在保全異議申立がなされ、審理が続いているとのことです。
 繰り返しますが、今、労働者が使用者の不当な対応に異議を申し立てれば、裁判所がいわばストーカー扱いをするという信じがたい事態が起きているのです。戦前の治安維持法の思想が、リニューアル&バージョンアップしつつあるということでしょうか。なんとかこの流れを止め、労働者が人間らしく生活し、自由に意見を述べられる社会を実現するために、私たちが闘っている裁判への注目とご支援をぜひ、お願いいたします。

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